Jul 10, 2010

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■東京都債と日本国債どっちを買う? 

 リビアを筆頭とする中東情勢の混乱から、オイルショックのような状況に陥りつつあります。そんな中、日本では心配した通り政治の混乱が悪化し、外資系格付け会社は日本国債を格下げ、日本の格付け会社であるR&Iも「日本国債のAAA維持はそろそろ限界」との認識を表明しました。

 もし日本国債が安全資産でないと考えるなら、市場はどうあるべきかを考えてみました。

■日本国債の状況を整理する

 日系格付け機関R&Iは3月7日、「日本国債のAAA維持はそろそろ限界」との認識を示しました。日本国債はどのような状況にあるのでしょうか? 

 日本国債の状況は、2つのポジティブ要因と2つのネガティブ要因に集約できます。

●ポジティブ要因

1. 日本は製造業の競争力が高く安定的に経常黒字を確保している。また、多額の対外債権を持っている、つまり外国からの借金はゼロである

2. 国債の発行残高が多いものの、国債はほぼすべて国内で消化されており、政府の管理の及ばない国外保有者が多い米国、南欧諸国などとは事情が大きく異なる

●ネガティブ要因

1. 歳入の半分以上が赤字国債で補填され、国債の発行残高が急増している。また、少子高齢化の進展から今後も歳出の増加が見込まれる

2. 政府には徴税権があり、最終的には国債は償還されると期待されているが、その徴税権を発動するはずの政府が機能不全に陥っており、危機が起きても法律改正などの対応ができない可能性がある

 日本国債はデフォルトするか? という議論は、この4つの論点がほぼ独立した形で噴出するため、結論にたどり着くことはありません。

 現在の状況は継続可能ではないと認識されているものの、今すぐ破綻してしまう決定的な要因もなく現在に至っています。今回、格付け会社は4つめの論点「政治の機能不全」を重く見て格付けの変更を行っています。

■日本国債が危機に陥るいくつかの要因

 危機が叫ばれ始めて10数年、結局何事もなく無事に乗り切ってきた日本国債ですが、実際に危機に陥るいくつかの要因が見えてきているので、確認したいと思います。

 日本国債が、実際に危機に陥る要因として以下のようなものがあげられます。

●格付けの格下げ

 格付け会社による国債の格下げは、国の関与が高いと想定されるあらゆる組織の格下げを引き起こします。

 企業の格下げは特に金融機関で影響が大きく、海外での営業活動に制約が出てきます。また、低い格付けは、金融機関だけでなく年金基金など機関投資にも大きな制約となるため、国債の消化が困難になります。

●金利の急激な上昇

 長年の金利の低位安定、貸し出しの低迷、預金の増加により、金融機関の国債保有残高は過去最高水準で推移しています。

 金利が何らかのショック要因で急激に上昇した場合、保有する国債の価格下落による自己資本の毀損、ボラティリティ上昇による保有残高の圧縮など、国債を売却する圧力が一方向に出てくる可能性が高まっています。

●政府の機能不全

 現在の国会は、自公政権の時とは異なり「真性のねじれ国会」であるため、赤字国債の発行のための特例公債法案が成立する見込みがありません。

 赤字国債が発行できなければ、米国で発生したような政府関係施設の閉鎖、給料の遅配などが発生します。また、そのような環境では国債の借換えが失敗、つまり国債の即時デフォルトも想定する必要が生じます。

■リスク資産となった日本国債

 金融工学では、「安全資産=国債」を想定しているため、国債がリスク資産になった場合を想定していません。リスク資産である日本国債に対して、どう向き合うべきか、以下3点にまとめてみました。

・円の行方
・キャッシュフロー創出力の違い
・東京都債は安全資産の座を奪うべき

 一つひとつ見ていきましょう。

●円の行方

「日本国債がデフォルト=円が暴落」という議論をよく耳にしますがこれは正しいのでしょうか? 

 円の暴落は、日本銀行が日本国債を際限なく引き受けたときに発生します。日本銀行も政府機関であるので一体であるという見方がありますが、日本銀行は常に中央銀行の役割と独立性を議論しているため、数十年かけて築いてきた通貨の信用を守ることを選択する可能性も高いと考えています。

 日銀が国債を引き受けた場合円は暴落しますが、日銀が国債の引き受けを行わなかった場合、国債がデフォルトする一方、円の信用は守られます。最終的にはどちらも国民生活に大きな混乱を招くのであれば、円の信用を守るという選択が、長期的に国益になると考えます。

 日本は黒字の国です。黒字の企業が手続きミスで倒産したとしても、立ち直りは速やかに進みます。日銀には、行き詰った政治から降りかかる火の粉を振り払い、通貨の番人としての役割を貫徹してほしいと思います。

 

●キャッシュフロー創出力の違い

 日本国債がリスク資産になってしまった原因の1つは、日本政府にキャッシュフローを生み出す力がなくなってしまったからであるということができます。

 税金というキャッシュ・インフローが増加しない一方、社会福祉関連などアウトフローが増大していることが原因です。キャッシュフローが破綻しているのは、政府だけではなく、政府関連機関や多くの地方自治体に共通している問題です。

 日本国債をリスク資産と考えるならば、日本政府よりキャッシュフローの創出能力の高い企業や自治体は「日本国債よりリスクが低い」と考えることができます。

 例えば地方自治体では、東京都は日本で唯一地方交付税を受けていない都道府県です。東京都には大企業が集中し人口も多いため、キャッシュフローを創出する力があります。企業で言えばトヨタ、日産、ソニーなどグローバルにビジネスを行っている多国籍企業は、日本の状況に関わらずキャッシュフローを生み出すことが可能です。

「国には立法権があり、何でもできる」という認識は、1つの国で閉じた経済では正しいですが、経済活動が国境を跨いで行われている現代では、この考え方は通用しません。グローバルに経済活動が行なわれる現代では、国の活動には大きな制約があります。

  日本国債は、「最終的には国がお金を刷って払ってくれる」「国債である」というだけで安全資産の立場を謳歌してきました。政府の行動に制約があり、キャッシュフローを生み出す力がないとすると、国債は安全であるという前提をもう一度考え直してみる必要がありそうです。



●東京都債は安全資産の座を奪うべき

 S&Pが日本国債と同時に東京都債の格付けも引き下げた際、東京都の石原慎太郎知事は「わけの分かるような分からんような話」とコメントしました。国と東京都との関係を考慮すると格下げは正しいという見方がある一方、基礎的な体力は圧倒的に異なることから判断が難しい所です。

 日本国債がリスク資産になったとみなされている今、新たな安全資産が必要になってきます。候補となるのは、東京都債、世界銀行などの国際機関、高格付けの多国籍企業連合などになるのでしょう。

 新たな安全資産を定義する方法が2つあると考えています。1つ目の方法は、「日本円」ではなく、「東京都円」を発行し、その間で為替取引を行う方法です。この場合、安全資産「東京都円」「東京都債」に対し、「日本円」「日本国債」はリスク資産となります。

 次に、より現実的な方法として、日本国債がリスク資産であるという認識に立ち、日本国債がデフォルトしてしまった場合の転換条項を整備することです。

 通常の東京都債では、円建てで発行される以上日本国債を下回る利回りで発行することは困難です。しかし、万が一日本国債がデフォルトした場合の転換条項を整備すれば、「日本国債より元本が保全される可能性の高い」債券を低い利回りで発行することが可能になると考えています。

「日本国債がデフォルトした場合、100円の額面に対し1か月前のユーロ/円為替レートを用いて計算した額面のドイツ国債を引き渡す」という条項が付いた東京都債、同じ条項がついたトヨタの社債、日本国債、あなたはどれを購入しますか? 近い将来、日本国債より低い金利で債券が発行されることを期待しています。




(課長 今調査役)

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